「三角関数は公式が多いし、何をやっているのかイメージしにくい」
そのように感じる人も多いかと思います。
しかし、三角関数は定義と基本的な公式さえ押さえていれば、案外イメージもしやすく分かりやすい分野なんです。
今回の記事では、三角関数という分野において基本であり最重要である、定義と6つの基本公式について紹介したいと思います。
定義と6つの基本公式の重要性
三角関数は定義と6つの基本公式さえ覚えてしまえば、残りの公式は全て導くことができます。
僕自身、今でもこの6つの基本公式以外の公式はうろ覚えのものが多いです。
試験中はうろ覚えの公式を用いるときは、証明によって再確認していました。
三角関数の公式は東大生でも全て暗記している人は少ないそうです。
(和積の公式などはその都度導いている。)
なので、主要となる定義と公式が大事なのです。
それでは早速定義から紹介していきます。
三角関数の定義
三角関数sin,cos,tanの定義は2つあります。
一つ目は直角三角形を使った定義で、二つ目は単位円(半径が1の円)を使った定義です。
一つ目の定義は三角関数のもとになる定義で、二つ目の定義はそれを拡張したものです。
とりあえず、まずは見てみましょう。
定義1.直角三角形を用いた定義
定義1:
$$\color{red}{0<\theta<\frac{\pi}{2}\,に対して}$$
∠A=θ、∠B=90°となる直角三角形ABCについて
$$\sin\theta=\frac{BC}{AC}$$
$$\cos\theta=\frac{AB}{AC}$$
$$\tan\theta=\frac{BC}{AB}$$
この定義から分かるように、三角関数とは直角三角形の2辺の比を表したものです。
直角三角形の相似条件より、一つの角の角度がθである直角三角形は全て相似なので、2辺の比は変わりません。
よって、θを決めることによってsinθ、cosθ、tanθはある一つの値に定まります。
(sinθとcosθは最初は混同しやすいですが、僕は「θを挟む方がcosθ」と覚えました。)
しかし、この定義では直角三角形を用いているので、θの範囲は
$$\color{red}{0<\theta<\frac{\pi}{2}}$$
に限られてしまいます。
そこで、θがどんな実数値をとっても対応できるようにしたのが二つ目の定義です。
定義2.単位円を用いた定義
定義2:
任意の実数θに対して
x軸の正の部分を原点中心に反時計回りにθだけ回転させた半直線と単位円の交点をP(x,y)とし、直線OPと直線x=1の交点をT(1,m)とすると
$$\sin\theta=y$$
$$\cos\theta=x$$
$$\tan\theta=m$$
この定義ではθがどんな実数値をとっても三角関数を定義できます。
しかしなぜいきなり単位円を使って定義しているのか、疑問に思う方もいるかと思います。
そこで、θの範囲が
$$0<\theta<\frac{\pi}{2}$$
の時に、定義2と定義1の表す意味が同じであるということを見ていきましょう。
$$0<\theta<\frac{\pi}{2}の時$$
単位円の図は次のようになります。
PおよびTからx軸におろした垂線とx軸の交点をそれぞれQ,Uとします。
ちなみにQ(x,0),U(1,0)です。
まずは三角形OPQに注目しましょう。
この三角形で三角関数の定義1からsinθ,cosθを求めると、
$$\sin\theta=\frac{PQ}{OP}=\frac{y}{1}=y$$
$$\cos\theta=\frac{OQ}{OP}=\frac{x}{1}=x$$
確かに、定義2と一致することがわかります。
これは単位円の半径が1、つまりOP=1であることが効いているんですね。
なのでsinθ,cosθともに分母が1になるので綺麗になります。
次に三角形OTUに注目しましょう。
今度はこの三角形で三角関数の定義1からtanθを求めます。
$$\tan\theta=\frac{UT}{OU}=\frac{m}{1}=m$$
これも定義2に一致することがわかります。
以上より
$$0<\theta<\frac{\pi}{2}の時$$
定義2は確かに定義1と同様の意味を持つことがわかりました。
定義1では、θの範囲は
$$0<\theta<\frac{\pi}{2}$$
が限界でしたが、定義2ならθをいくらでも大きくしても、負の値にしても三角関数が定義できます。
三角関数の6つの基本公式
基本公式1〜3
基本公式の最初の3つは三角関数のそれぞれの関係を表した式です。
次の3つになります。
基本公式1
$$\sin ^2 \theta+\cos^2\theta=1$$
基本公式2
$$\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$$
基本公式3
$$\tan^2\theta+1=\frac{1}{\cos^2\theta}$$
$$(\sin^2\theta=(\sin\theta)^2)$$
最初の2つは頻出で覚えやすいので絶対に暗記しましょう。
基本公式3は少し覚えにくいので公式1と公式2から導いてもいいでしょう。
僕は暗記が苦手なので、公式3も毎回自分で導いてから使っていました。
では、公式3の導き方を紹介します。
公式3の導き方:
公式1より
$$\sin ^2 \theta+\cos^2\theta=1$$
両辺をcos2θで割ると、
$$\frac{\sin^2\theta}{\cos^2\theta}+1=\frac{1}{\cos^2\theta} ・・・①$$
公式2より
$$\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$$
両辺を2乗すると
$$\tan^2\theta=\frac{\sin^2\theta}{\cos^2\theta} ・・・②$$
②を①に代入すると
$$\tan^2\theta+1=\frac{1}{\cos^2\theta}$$
これで公式3を導けた。
この3つの公式はsin,cos,tanのそれぞれの関係式です。
よって、sinが分かればcosが分かるし、cosが分かればtanがわかります。
つまり、sin,cos,tanのどれか一つが分かれば、他の2つを求めることができます。
ちなみに公式1は定義2から、公式2は定義1から導けます。
一様書きますが、公式1、2は暗記で構わないので興味のある人だけ読んでください。
基本公式1の導き方:
定義2を使う
上の図で
$$\sin\theta=y ・・・①$$
$$\cos\theta=x ・・・②$$
また、単位円の方程式より
$$x^2+y^2=1^2$$
この式に①,②を代入すると
$$\sin ^2 \theta+\cos^2\theta=1$$
これで公式1を導けた。
基本公式2の導き方:
定義1を使う
上の図で
$$\sin\theta=\frac{BC}{AC}$$
$$\cos\theta=\frac{AB}{AC}$$
$$\tan\theta=\frac{BC}{AB}$$
また、導きたい公式2は
$$\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$$
$$(右辺)=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$$
$$=\frac{\frac{BC}{AC}}{\frac{AB}{AC}}$$
$$=\frac{BC}{AB}$$
$$=\tan\theta=(左辺)$$
これで公式2を導けた。
基本公式4〜6
基本公式の4〜6は加法定理です。
次の3つになります。
基本公式4
$$\sin\left(\alpha+\beta\right)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta$$
基本公式5
$$\cos\left(\alpha+\beta\right)=\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta$$
基本公式6
$$\tan\left(\alpha+\beta\right)=\frac{\tan\alpha+\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}$$
最初の2つは頻出で導くのが難しいので絶対暗記しましょう。
公式6については、覚えにくいしあまり使わないので導いて使った方がいいかもしれません。
しかし導くのも少々手間がかかるので暗記するに越したことはないです。
では、公式6の導き方を紹介します。
基本公式6の導き方:
公式2
$$\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$$
公式4
$$\sin\left(\alpha+\beta\right)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta$$
公式5
$$\cos\left(\alpha+\beta\right)=\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta$$
を使って導く。
導きたい公式は
$$\tan\left(\alpha+\beta\right)=\frac{\tan\alpha+\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}$$
$$(左辺)=\tan\left(\alpha+\beta\right) 公式2より$$
$$=\frac{\sin\left(\alpha+\beta\right)}{\cos\left(\alpha+\beta\right)} 公式4,5より$$
$$=\frac{\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta}{\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta}$$
分母分子をcosαcosβで割ると、
$$(左辺)=\frac{\frac{\sin\alpha}{\cos\alpha}+\frac{\sin\beta}{\cos\beta}}{1-\frac{\sin\alpha\sin\beta}{\cos\alpha\cos\beta}}$$
$$=\frac{\tan\alpha+\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}=(右辺)$$
これで公式6を導けた。
ちなみに、公式4,5は余弦定理を用いて証明することができます。
長くなるのでここでは取り上げません。
ここのページの説明がわかりやすかったので、興味のある方は見てみてください。
(加法定理の証明(一般角に対する厳密な方法)http://mathtrain.jp/kahouteiri)
まとめ(復習)
三角関数は定義と6つの基本公式さえ覚えればあとは導けます。
定義には次の2つがあります。
- 直角三角形を用いた定義(0<θ<90°)
- 単位円を用いた定義(θは任意の実数値)
基本公式は次の6つです。
- $$\sin ^2 \theta+\cos^2\theta=1$$
- $$\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$$
- $$\tan^2\theta+1=\frac{1}{\cos^2\theta}$$
- $$\sin\left(\alpha+\beta\right)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta$$
- $$\cos\left(\alpha+\beta\right)=\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta$$
- $$\tan\left(\alpha+\beta\right)=\frac{\tan\alpha+\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}$$
次回は定義と基本公式から他の主要な三角関数の公式を導く方法を紹介します。
今回はこれで終わりです。
お疲れ様でした、またね。