書評

【書評】車輪の下 ヘルマン・ヘッセ

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こんにちは、よしきです。

本日はこの小説のレビューをしたいと思います。

有名な小説ですね。

本日の記事はネタバレを含みます。

小説を読み終えた後か、読んだことがある人向けの内容です。

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著者

  • ヘルマン・ヘッセ

ドイツの抒情詩人・小説家。南独カルプの牧師の家庭に生れ、神学校に進むが、「詩人になるか、でなければ何にもなりたくない」と脱走、職を転々の後、書店員となり、1904年の『郷愁』の成功で作家生活に入る。両大戦時には、非戦論者として苦境に立ったが、スイス国籍を得、在住、人間の精神の幸福を問う作品を著し続けた。’46年ノーベル文学賞受賞。

 

あらすじ

ヘッセの自伝的物語となっています。

田舎で産まれたハンスはその才能で神学校に進むが、学校の規律などの息苦しさに耐えかねて学校を辞めて、田舎で見習い工として下っ端から働くことになる。

 

物語のメッセージ

ヘッセの人生を元に作られたにも関わらず、非常にメッセージ性の強い作品です。

そのメッセージとは、「国家の理想の像を生徒に押し付ける教師への批判」です。

教師という生き物

車輪の下では教師(や他の大人達)のあり方が批判的に描写されています。

分かりやすいシーンとしては、自由な詩人である神学校生徒のハイルナーが同級生のルチウスとの喧嘩がきっかけで校長に重い罰を受けることになるシーンでしょう。

その原因はルチウスを蹴飛ばして、神聖な校長の部屋を汚したからです。

なんというくだらない理由でしょう。

校長のくだらないプライド、名誉心のためです。

この事件をきっかけにハイルナーは他生徒と埋めようのない溝が出来ることになりますし、ハンスもそれに苦しめられます。

先生たちはいつも、死んだ生徒を生きている生徒に対するとはまったく違った目で見るものである。死んだ生徒に対すると、先生たちはふだんはたえず平気で傷つけている一つ一つの生命や、青春のとうとさや、取り返しがたさをしばしのあいだ強く感ずるのである。

これはハンスの同級生のヒンディンガーの死の際の描写です。

また、天才ハイルナーが学校を辞めた時も

先生たちのひとりは、(中略)「なぜきみはりっぱな親友ハイルナーといっしょに行かなかったのだ?」

とハンスに皮肉を垂れるほどハイルナーを勝手に立派な人物に仕立て上げています。

自分の眼前にいるときは教師面をして、いなくなった途端に神聖なものに置き換える、そういう教師像を批判的に描写しています。

学校と父親や二、三の教師の残酷な名誉心とが、傷つきやすい子どものあどけなく彼らの前にひろげられた魂を、なんのいたわりもなく踏みにじる

とヘッセは書きます。

そう、名誉心

先生たちは「立派な」生徒に仕立て上げようという名誉心によって、無自覚に子どもを押さえつけてしまいます。

繊細で多感な少年の心の描写

少年の儚く豊かな心情の表現もこの小説の魅力です。

ハイルナーがハンスと仲良くなった時のハイルナーの心情は

その原因の一部は子どもの心のひそかな告別であり、一部はいろいろな力やほのかな思いや欲望などのまだあてどを知らぬ奔流であり、一部はおとなになるときのわけのわからない暗い衝迫だった。

と書かれています。

なかなか分析力に富んだ表現ですね。

また、自然の描写も豊かで、こういった細かい表現力に唸りながら楽しんで読み進めることが出来ます。

ハンスが失敗した原因

さて、物語はバットエンドで終結するのですが、その原因と対策について考察してみます。

失敗した原因ですが、まず最初に浮かぶのが、周りの大人たちのせい、ですね。

生徒の気持ちに寄り添わない教師や誇りだけは立派で学のない父などの存在です。

 

続いて時代背景や国家です。

今は自由な時代になりましたが、当時のドイツでハンスが進むことが可能な道というのは狭い一本道のみで

神学校にはいり、つぎにチュービンゲン大学に進んで、それから牧師か教師になる

という道のみです。

進路が狭いことによる圧迫感は少なからず少年の肩に重荷としてのしかかっていたでしょう。

 

最後に自身の無益なプライドと柔軟性の無さです。

教師や父から植え付けられた名誉心は、自分は優れているという誇りとしてハンスの中に根付いてしまいました。

不良のハイルナーと仲良くすることでその名誉心を守れない状況になりましたが、自分の生き方に自信を持てるだけの強さがハンスにあればどうにかうまくいったかもしれません。

はたまたうまく立ち回る柔軟性があれば。

バカ正直で真面目で完璧主義で、目の前のことにいっぱいいっぱいになり、ふとしたきっかけでポッキリ折れてしまう。

それがハンス・ギーベンラートの弱さだと思いました。

どうすれば良かったか

では、どうすれば良かったのでしょう。

時代背景や環境はハンス自身が変えようと思ってもなかなか難しいものです。

 

ハンスはもっと自分の内面と向き合う必要があったように思います。

ハンスは自分が教師に対して疑念や反抗心を抱いていることに気づいていません。

いや、気づかないふりをしています。

誇りや正義感で現実を歪めて見ており、自分の内面と向き合わないため向かってくる現実に太刀打ちできていません。

例えば、秘密の日記をつけて内面を見つめればもう少しいい方向に人生が向いたと思います。

まとめ

この小説はハンスという反面教師を通じてバカ正直に生きることに警鐘を鳴らす作品です。

教師や国家を批判する小説、と見ることもできますが、僕はどちらかと言うとヘッセが自分の人生を振り返って自戒の気持ちで書いているものであると感じました。

自分の身は自分で守るべし、僕たちもこの汚い世の中で柔軟に生きる力を得ねばなりませんね。

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