前回の記事「三角関数は定義と6つの基本公式さえ覚えれば良い」で三角関数の定義と最重要となる6つの基本公式について紹介しました。
今回は、それらを使って三角関数の性質やその他の公式を導く方法を紹介したいと思います。
三角関数の性質や公式はたくさんあり、丸暗記をしていてはなかなか身につきません。
導き方を学ぶことで、暗記しやすくなり、忘れてしまっても自分で作れるようになります。
part1では、三角関数の公式(性質)を「三角関数の単位円の定義」を使うことで導いていきます。
次回のpart2では、三角関数のその他の公式を6つの基本公式から導く方法を紹介します。
では、早速見ていきましょう。
①三角関数の有名角の値
三角関数の次の表を見てください。
これは、有名角における三角関数の値を表にしたものです。
有名角とは、三角関数sin,cos,tanがこの表のように綺麗な値になる角のことです。
具体的には、
θ=0°, 30°, 45°, 60°, 90°, 120°, 135°, 150°, 180°, 210°, 225°, 240°, 270°, 300°, 315°, 330°, 360°...
のことです。
覚えなさいと言われても、この表を全て暗記するのはなかなか難しいですよね。
しかし、実はこの表はコツさえつかんでしまえば簡単に自分で作ることができます。
この表を覚える際に重要なのが、
単位円と関連付けてイメージで覚える!
ということです。
これさえ出来てしまえば、いとも簡単に表が作れてしまいます。
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三角関数の有名角の表の作り方
例えばθ=150°の時のsinθ、cosθ、tanθの値を単位円を使って考えてみましょう。
前回紹介した単位円による三角関数の定義を使います。
この時、
$$\sin\theta=y$$
$$\cos\theta=x$$
$$\tan\theta=m$$
でしたね。
ここで、さっきの表を見れば分かりますが、
有名角のsinθ,cosθの値は符号を考えなければ、次の5つのうちのどれかになります。
$$0,\frac{1}{2},\frac{\sqrt{2}}{2},\frac{\sqrt{3}}{2},1 (小さい順)$$
そこで単位円を見てこれのどれに当てはまるか検討します。
「xは符号は負で、かなり-1に近い」、「yは符号は正で、0と1の真ん中にある」ので、
$$\sin150^\circ=y=\frac{1}{2}$$
$$\cos150^\circ=x=-\frac{\sqrt{3}}{2}$$
と求まります。
tanθの値も符号を考えなけば次の5つになります(「なし」もカウントした場合)。
$$0,\frac{1}{\sqrt{3}},1,\sqrt{3},なし (小さい順)$$
先程の単位円を見ると、「mは符号は負で、大きさは0<|m|<1」なので
$$\tan150^\circ=-\frac{1}{\sqrt{3}}$$
と求まります。
(tanθの値を求める方法は、今回のようにmの値から求める以外に2つあります。
1つ目はtanθ=(傾き)を使った方法で、2つ目はtanθ=sinθ/cosθを使った方法です。
自分にあったやり方を見つけましょう。)
同様にして、単位円を用いて150°以外のすべての有名角での三角関数の値も求めることができます。
自分で表が作れるようになるまで単位円を書いて練習しましょう。
②三角関数の性質(sin(-θ)=-sinθなど)
三角関数の基本性質として次の式が成り立ちます。
(1)
$$\sin(-\theta)=-\sin\theta$$
$$\cos(-\theta)=\cos\theta$$
$$\tan(-\theta)=-\tan\theta$$
(2)
$$\sin(\pi \pm \theta)=\mp \sin\theta$$
$$\cos(\pi \pm \theta)=-\cos\theta$$
$$\tan(\pi \pm \theta)=\pm \tan\theta$$
(複号同順)
(3)
$$\sin(\frac{\pi}{2} \pm \theta)=\cos\theta$$
$$\cos(\frac{\pi}{2} \pm \theta)=\mp \sin\theta$$
$$\tan(\frac{\pi}{2} \pm \theta)=\mp \frac{1}{\tan\theta}$$
(複合同順)
(π=180°)
これらの性質も同様に単位円を用いて導くことができます。
(1)の導き方
(1)
$$\sin(-\theta)=-\sin\theta$$
$$\cos(-\theta)=\cos\theta$$
$$\tan(-\theta)=-\tan\theta$$
この式は、言い換えると
「sinθとsin(-θ)の値は、符号が逆になる」
「cosθとcos(-θ)の値は、変わらない」
「tanθとtan(-θ)の値は、符号が逆になる」
という意味になります。
では、導いてみましょう
次の図を見てください。(ここからの図は分りやすいようにθは30°程度にしています。)
θと-θでは、x座標がそのままで、y座標の符号が反転していることがわかります。
よって、x座標のcosの値は変わらず、y座標に関わるsinとtanは符号が変わります。
なので、
$$\sin(-\theta)=-\sin\theta$$
$$\cos(-\theta)=\cos\theta$$
$$\tan(-\theta)=-\tan\theta$$
となります。
(2)の導き方
(2)
$$\sin(\pi \pm \theta)=\mp \sin\theta$$
$$\cos(\pi \pm \theta)=-\cos\theta$$
$$\tan(\pi \pm \theta)=\pm \tan\theta$$
これも同様に単位円を使います。
$$\sin(\pi \pm \theta)=\mp \sin\theta$$
を見てみましょうか。
sinはPのy座標に対応します。
π-θの時は、Pのy座標はθの時と変わりません。
それに対し、π+θの時は、Pのy座標がθの時と符号が逆になります。
よって、
$$\sin(\pi \pm \theta)=\mp \sin\theta$$
となります。
cos,tanも同じように導けます。
上の単位円を見て、みなさんで確認してみてください。
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少々余談ですが、①で紹介した三角関数の有名角の表からもこの公式(の正の部分)を確認することができます。
(2)の正の部分
$$\sin(\pi + \theta)=- \sin\theta$$
$$\cos(\pi + \theta)=-\cos\theta$$
$$\tan(\pi + \theta)=\tan\theta$$
(πは180°である。)
同じ行(±180°)について、sinθ,cosθは符号が逆になり、tanθは変わらないことが分かります。
(3)の導き方
(3)
$$\sin(\frac{\pi}{2} \pm \theta)=\cos\theta$$
$$\cos(\frac{\pi}{2} \pm \theta)=\mp \sin\theta$$
$$\tan(\frac{\pi}{2} \pm \theta)=\mp \frac{1}{\tan\theta}$$
負の部分を導きたいと思います。
つまり、
$$\sin(\frac{\pi}{2} - \theta)=\cos\theta$$
$$\cos(\frac{\pi}{2} - \theta)=\sin\theta$$
$$\tan(\frac{\pi}{2} - \theta)=\frac{1}{\tan\theta}$$
ですね。
次の図をみてください。
上の図で、紫の部分の長さは同じになります。
よって、
$$\sin(\frac{\pi}{2} - \theta)=\cos\theta$$
となります。
同様に、次の図で緑の長さは同じになります。
よって
$$\cos(\frac{\pi}{2} - \theta)=\sin\theta$$
となります。
また、今の結果より
$$\tan(\frac{\pi}{2} - \theta)$$
$$=\frac{\sin(\frac{\pi}{2} - \theta)}{\cos(\frac{\pi}{2} - \theta)}$$
$$=\frac{\cos\theta}{\sin\theta}$$
$$=\frac{1}{\frac{\sin\theta}{\cos\theta}}$$
$$=\frac{1}{\tan\theta}$$
以上より
$$\sin(\frac{\pi}{2} - \theta)=\cos\theta$$
$$\cos(\frac{\pi}{2} - \theta)=\sin\theta$$
$$\tan(\frac{\pi}{2} - \theta)=\frac{1}{\tan\theta}$$
正の方も同じように導きます。
みなさんでやってみてください。
また、(3)の公式も有名角の表で確認することができます。
これもぜひ確認してみてください。
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まとめ
今回は三角関数の性質について2つ紹介しました。
- ①三角関数の有名角の値
- ②三角関数の性質(sin(-θ)=-sinθなど)
-
(1)
$$\sin(-\theta)=-\sin\theta$$
$$\cos(-\theta)=\cos\theta$$
$$\tan(-\theta)=-\tan\theta$$
-
(2)
$$\sin(\pi \pm \theta)=\mp \sin\theta$$
$$\cos(\pi \pm \theta)=-\cos\theta$$
$$\tan(\pi \pm \theta)=\pm \tan\theta$$
(複号同順)
-
(3)
$$\sin(\frac{\pi}{2} \pm \theta)=\cos\theta$$
$$\cos(\frac{\pi}{2} \pm \theta)=\mp \sin\theta$$
$$\tan(\frac{\pi}{2} \pm \theta)=\mp \frac{1}{\tan\theta}$$
(複合同順)
-
これらは単位円と関連付けて覚えることで効率的に理解することができます。
最初のうちは難しく感じるかもしれませんが、何度も単位円を書くうちに慣れていくはずです。
練習を重ねて自分のものにしましょう。
次回のpart2では、三角関数のその他の公式について、前回の記事で紹介した6つの基本公式から導いていきます。
こちらからどうぞ。
それでは、今回はこれで終わりにします。
またね。